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【2026年版】犬の手術費用の相場|疾患別レンジと自己負担の試算

犬の手術費用に公定価格が無い理由を独占禁止法から説明し、日本獣医師会の診療料金実態調査から疾患別の中央値を一覧化。アニコムの請求データと各社公式の補償条件を重ねて、保険を使ったときの自己負担額まで試算しました。

術後にカラーを付けて毛布で休む犬
この画像はAIで生成したイメージです。実在の場所・書類・製品を撮影したものではありません。

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「犬の手術って、いくらかかるんですか」

この質問に、動物病院はその場で一律の答えを出せません。隠しているのではなく、制度としてそういう仕組みになっているからです。ここが、人の医療費と決定的に違うところ。まずそこから始めます。

この記事の目次
  1. 時間がない人へ:3行の結論
  2. そもそも、なぜ「相場」がハッキリしないのか
  3. 公正取引委員会は「様式は揃えていいが、金額はダメ」と答えている
  4. では公表されている「実態調査」は何なのか
  5. どうやってこの記事の数字を選んだか
  6. 疾患別・手術費用の一覧(高い順)
  7. 「白内障が1万円」という数字の読み方
  8. 手術料だけでなく、請求総額で考える
  9. 保険をかけたら、いくら返ってくるのか
  10. 保険の比較は「補償割合」より先に見るところがある
  11. 主要商品の条件を横並びにする(2026-08-19時点・各社公式ページより)
  12. 商品タイプごとの、向いている人
  13. 保険を比べるときに読むべき5項目
  14. 一次情報から見えた、他ではあまり書かれていない話
  15. 1. 全国の小動物診療施設は13,046か所。その6割は獣医師1人
  16. 2. 「安い病院」を探す前に、「どこで受けられるか」を調べると近道
  17. 3. 診療費は8歳あたりから角度が変わる
  18. 4. 高齢期にお金がかかる病名は、手術とは限らない
  19. 5. 犬種によって、そもそも到達する年齢が違う
  20. よくある質問
  21. Q. 見積もりは、なんて言って頼めばいいですか
  22. Q. 病院によって料金が違うのはなぜですか
  23. Q. 補償割合は50%と70%、どちらを選べばいいですか
  24. Q. 保険に入っていない状態で高額な手術を提示されました
  25. Q. この記事の金額は、いつの数字ですか
  26. まとめ:数字を持って病院に行く

時間がない人へ:3行の結論

  • 一般的な軟部外科(子宮蓄膿症・胃腸切開・乳腺腫瘍・脾臓摘出など)は、手術料の中央値がだいたい4万〜5万円台。 麻酔・入院・検査を足して、請求総額は6万〜12万円あたりに落ち着くことが多い
  • 整形外科と神経外科は桁が変わる。 椎間板ヘルニアの椎弓切除は手術料の中央値だけで7万〜9万円台。MRIや二次診療施設への紹介が乗ると、総額20万〜40万円という声も珍しくない
  • 保険を検討するなら、見るべきは「補償割合」より先に「1回あたりの支払限度額」と「年間の限度日数・回数」。 手術1回14万円・年2回、通院年20日といった上限が、実際の自己負担を決めます

以下、根拠になる数字を全部出します。

そもそも、なぜ「相場」がハッキリしないのか

結論から言うと、動物病院の診療料金には公定価格が存在せず、しかも「業界で目安を決めること」自体が独占禁止法で禁じられているからです。

公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査(平成27年度)」
公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査(平成27年度)」(jvma-vet.jp・2026-10-12時点の画面)

日本獣医師会は、自分たちのサイトでこう説明しています。獣医師の診療料金は、独占禁止法により、獣医師団体が基準料金を決めたり、獣医師同士が協定して料金を設定したりすることが禁じられている。現行法のもとでは獣医師は各自が料金を設定して競争できる体制を維持しなければならないため、動物病院によって料金に幅があるのは当然である、と。

つまり「業界標準料金表」は、作ろうと思っても作れません。

人の医療 公的医療保険がある 診療報酬点数表で価格が決まる 全国どこでも同じ値段 窓口負担は原則1〜3割 高額療養費という上限もある 動物医療 公的医療保険が無い 団体で基準料金を決めるのは禁止 病院ごとに値段が違う 窓口負担は原則ぜんぶ自己負担 上限を作るのは民間保険だけ

公正取引委員会は「様式は揃えていいが、金額はダメ」と答えている

これ、公正取引委員会の相談事例に実物が残っています。

公正取引委員会「相談事例49 獣医師会の診療料金に関するアンケート調査[団体ガイドライン8-7]」
公正取引委員会「相談事例49 獣医師会の診療料金に関するアンケート調査[団体ガイドライン8-7]」(jftc.go.jp・2026-10-12時点の画面)

ある地区獣医師会が、「診療料金の透明化のために、会員へ料金表のモデル様式(ひな型)を配って、院内に掲示するよう勧めたい」と相談しました。公取委の回答は、問題ない。ただし条件つきです。

事業者団体が取引条件の明確化のために契約の文書化を奨励することは、取引条件そのものの内容(具体的な価格など)に関与せず、利用や遵守を強制しないかぎり、原則として独占禁止法上問題とならない――という考え方が示されています。

読み解くとこうなります。

  • 料金表の「フォーマット」を揃えるのはOK
  • 料金表の「金額」に口を出すのはNG

動物病院の料金表がどこも似た項目名なのに金額には幅があるのは、制度がそう設計されているからです。

では公表されている「実態調査」は何なのか

料金を決めるのはダメでも、すでにいくら請求されているかを調べて公表するのは別の話です。日本獣医師会は実際にそれをやっています。

  • 平成11年(1999年)に最初の小動物診療料金実態調査
  • 約15年あいて、平成26年度(2014年度)に「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」。小動物臨床獣医師1,365名と、一般飼育者3,096名が回答
  • その後、令和3年度、令和5年にも調査が公表されている

この記事で疾患別の数字として使うのは、平成26年度調査(回答1,365名分)です。

どうやってこの記事の数字を選んだか

金額の出し方を先に整理しておきます。

  1. 公的団体・省庁・保険会社が自ら公表した数字だけを使いました。動物病院の個別サイトの料金表や、まとめサイトの「相場」は使っていません
  2. 平均値ではなく中央値を優先しました。手術費用は一部の高額例で平均が引っ張られます。「真ん中の病院はいくらか」を知りたいなら中央値のほうが実感に近いです
  3. 「自院では実施していない」と答えた病院の割合も併記しました。他の記事でほとんど見ない項目ですが、後述するとおり相場より重要になる場面があります
  4. 保険の条件は各社の公式ページから直接取りました。2026-08-19時点の記載です

疾患別の細かい料金分布は、ブラウザで表として読める平成26年度調査から採っています。つまり、この記事の疾患別の金額は2014年度時点のものです。10年以上前です。人件費も医療材料費も上がっているので、今はこれより高いと考えたほうが現実的でしょう。「下限の目安」として読んでください。最新の全体感は、後半でアニコムの2023年度請求データを使って補います。

もうひとつ、大事な注意書き

日本獣医師会の調査票には、こう書かれています。麻酔料は含めず、犬では体重10kgでの料金を答えてください、と。

つまり以下の表の金額は、麻酔代が入っていない、10kgの犬を想定した手術料単体です。請求書の合計額ではありません。見積もりは総額で聞くと、金額の見通しがそろいます。

疾患別・手術費用の一覧(高い順)

日本獣医師会 平成26年度調査の中央値です。「自院では未実施」は、その手術を自院では行わず紹介などで対応していると答えた病院の割合。

手術(術式) 手術料の中央値 自院では未実施と答えた病院
椎間板ヘルニア(ベントラルスロット) 88,929円 74.4%
動脈管開存症 90,625円 76.6%
環軸亜脱臼 81,818円 76.3%
椎間板ヘルニア(椎弓切除) 78,711円 66.5%
椎間板ヘルニア(片側椎弓切除) 76,108円 60.2%
脊椎骨折 75,000円 60.9%
骨盤骨折 67,411円 40.4%
肺葉切除 64,948円 63.2%
胆嚢切除 54,315円 39.0%
大腿骨骨折 51,448円 24.0%
胃切除 50,000円 39.7%
前十字靭帯断裂(関節内法) 49,528円 53.8%
上腕骨骨折 49,410円 25.0%
下腿骨骨折 49,331円 24.0%
腎臓摘出 49,150円 34.1%
橈尺骨骨折 48,750円 24.0%
前十字靭帯断裂(関節外法) 47,984円 43.0%
横隔膜ヘルニア 47,259円 18.0%
全耳道切除・鼓室胞切開 47,062円 52.4%
股関節脱臼(観血的整復) 47,092円 35.5%
腸切除・吻合 46,397円 3.2%
膀胱腫瘍切除 45,714円 20.7%
膝蓋骨脱臼 45,309円 31.1%
断脚(後肢) 45,813円 12.9%
帝王切開 43,939円 6.2%
会陰ヘルニア 43,510円 10.2%
脾臓摘出 43,510円 16.4%
乳腺腫瘍全切除 43,062円 5.9%
大腿骨頭切除 43,770円 22.2%
気管虚脱 41,000円 73.0%
子宮蓄膿症 41,131円 1.6%
卵巣腫瘍 40,000円 5.3%
腸切開 38,750円 4.5%
胃切開 38,129円 4.5%
膀胱切開 36,898円 4.5%
尿道切開 36,144円 14.9%
垂直耳道切除 34,688円 36.1%
直腸脱 32,392円 10.0%
肛門嚢切除 32,201円 16.7%
眼球摘出 30,863円 10.3%
肛門周囲腺腫 30,867円 6.4%
潜在精巣(腹腔内) 28,500円 7.0%
犬の避妊(卵巣子宮切除) 27,413円 0.7%※
精巣腫瘍 27,107円 3.7%
犬の避妊(卵巣切除) 26,780円 58.5%※
腹壁ヘルニア 26,595円 5.6%
乳腺腫瘍部分切除 25,858円 2.8%
眼瞼内反 22,868円 16.2%
チェリーアイ 22,256円 8.6%
眼瞼腫瘍切除 20,898円 7.6%
腫瘤切除(体表) 19,789円 1.3%
臍ヘルニア 19,460円 2.3%
犬の去勢 17,675円 1.3%
耳血腫 17,874円 9.4%
緑内障 17,419円 70.9%
股関節脱臼(非観血的整復) 16,559円 18.4%
白内障 10,000円 78.8%

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※避妊手術は「卵巣切除」と「卵巣子宮切除」で対応が分かれます。日本では卵巣子宮切除が主流で、卵巣切除のみを行う病院は少ないため未実施率が高く出ています。

(出典:日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」平成26年度実施・回答1,365名。麻酔料を含まず、犬は体重10kgでの料金)

「白内障が1万円」という数字の読み方

この表でいちばん目を引くのが白内障です。中央値10,000円。他の術式と比べてかなり低く見えます。

理由は右端の列にあります。白内障手術は78.8%の病院が「自院では未実施」と答えています。つまり実際に手術している病院は少数で、残りの回答には「白内障の診察・点眼処置」として答えた数字が混ざっている可能性が高い。緑内障の70.9%も同じ構図です。

眼科手術は専門施設で行われることが多く、実勢はこの数字よりかなり上と考えるのが自然です。未実施率が半分を超えている行は、金額よりも「近所の病院ではなく専門施設で受ける手術」という情報のほうが本体だと思ってください。

手術料だけでなく、請求総額で考える

「膝蓋骨脱臼は4万5千円」という手術料は、請求書の一部です。麻酔・入院・検査を足した総額で見ておくと、準備がしやすくなります。

請求書は「手術料」だけではない 数字は日本獣医師会 平成26年度調査の中央値(小型犬・入院3日と仮定)

初診 術前検査 全身麻酔 手術料 入院 薬・処置

1,386円 病院により差 10,020円 表の中央値 2,729円×日数 病院により差

見積もりのコツ 「手術料4万円」+麻酔・入院・検査 → 総額は6万〜9万円 見積もりは「麻酔と入院を含めた総額」で聞くと、見通しがそろいます

同じ調査から、周辺の費用の中央値も拾えます。

項目 中央値
初診料 1,386円
再診料 726円
往診料(通常) 2,232円
時間外診療(平日) 2,324円
時間外診療(休診日) 2,646円
時間外診療(深夜) 4,513円
全身麻酔 10,020円
鎮静 3,326円
硬膜外麻酔 5,556円
入院料・犬(小型)1日 2,729円
入院料・犬(中型)1日 3,491円
入院料・犬(大型)1日 4,201円
入院料・犬(特大)1日 4,753円
入院料・猫 1日 2,619円
ICU 1日 3,788円

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体重が増えると入院料も麻酔量も上がります。大型犬は同じ病気でも総額が大きくなりやすい、というのはここに出ています。

保険をかけたら、いくら返ってくるのか

数字を組み立てて自己負担を出します。

試算の前提

  • 手術料は上の表の中央値
  • 全身麻酔10,020円、初診料1,386円、入院は小型犬2,729円/日を加算
  • 術前の血液検査・レントゲン・CT・MRI・術後の薬は含んでいません(調査項目が別のため)
  • 補償割合は総額に一律で掛けています。実際は「通院」「入院」「手術」の区分ごとに計算され、区分ごとの限度額が適用されます
  • したがってこの表は実際より安い方向にブレた最小ラインです
ケース 手術料 入院 概算総額 70%補償の自己負担 50%補償の自己負担
避妊(卵巣子宮切除) 27,413円 1日 41,548円 41,548円 41,548円
腫瘤切除(体表) 19,789円 1日 33,924円 10,177円 16,962円
膀胱切開(結石) 36,898円 2日 53,762円 16,129円 26,881円
腸切開(誤飲) 38,750円 3日 58,343円 17,503円 29,172円
子宮蓄膿症 41,131円 4日 63,453円 19,036円 31,727円
乳腺腫瘍 全切除 43,062円 3日 62,655円 18,797円 31,328円
膝蓋骨脱臼(片側) 45,309円 3日 64,902円 19,471円 32,451円
前十字靭帯(関節外法) 47,984円 4日 70,306円 21,092円 35,153円
大腿骨骨折 51,448円 5日 76,499円 22,950円 38,250円
椎間板ヘルニア(片側椎弓切除) 76,108円 7日 106,617円 31,985円 53,309円
動脈管開存症 90,625円 5日 115,676円 34,703円 57,838円

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避妊手術の行だけ、補償割合を掛けていません。 去勢・避妊は予防目的の手術として、補償対象外と各社が明記しているためです。第一アイペットの「うちの子」公式ページでは、補償対象外の例として保険期間開始前からの傷病、ワクチンで予防できる病気、予防目的の診療、交配・出産、去勢・避妊、健康診断などが挙げられています。

この表からわかること

  1. 一般的な軟部外科なら、70%補償で自己負担2万円前後に収まる計算になります
  2. ただし検査代とMRIが入っていません。椎間板ヘルニアの実勢はこの表の2〜4倍を見ておいたほうが安全です
  3. 50%と70%の差額は、1回の手術あたり1万〜2.5万円程度。年に何回も手術する犬は多くないので、補償割合は保険料とあわせて見ると判断しやすい、というのが数字から言えることです

保険の比較は「補償割合」より先に見るところがある

補償割合70%と50%、という軸に加えて、その下にある3段の条件もあわせて見ると、自己負担の見通しが立てやすくなります。

診療費が保険金になるまでの4ステップ かかった診療費の総額 ステップ1 補償対象か(去勢・避妊・予防・健診・加入前からの傷病は対象外) 待機期間の扱いも商品ごとに決まっています ステップ2 補償割合を掛ける(50% / 70% / 90% / 100% など) ステップ3 1日・1回あたりの支払限度額の範囲で支払われる ステップ4 年間の限度日数・回数の範囲内で支払われる

主要商品の条件を横並びにする(2026-08-19時点・各社公式ページより)

商品 補償割合 通院 入院 手術 年間上限
アニコム損保 どうぶつ健保ふぁみりぃ 70% / 50% 1日14,000円 / 10,000円・年20日 1日14,000円 / 10,000円・年20日 1回140,000円 / 100,000円・年2回 84万円 / 60万円
アニコム損保 どうぶつ健保ぷち 70% 補償なし 1日14,000円・年20日 1回500,000円・年2回 記載なし
第一アイペット うちの子(70%) 70% 1日12,000円・年22日 1日30,000円・年22日 1回150,000円・年2回 122.4万円
第一アイペット うちの子(50%) 50% 1日12,000円・年22日 1日12,000円・年22日 1回100,000円・年2回 72.8万円
第一アイペット うちの子(30%) 30% 1日9,000円・年22日 1日9,000円・年22日 1回40,000円・年2回 47.6万円
第一アイペット うちの子ライト 90% 補償なし 手術を含む連続入院(手術1回につき10日まで) 1回500,000円・年2回 記載なし
FPC フリーペットほけん 70% / 50% 1日12,500円・年30日 1入院125,000円・年3入院 1回100,000円・年1回 85万円
PS保険 100%補償プラン 100%(他に70% / 50%) 年間最大20万円 年間最大60万円 年間最大20万円 110万円

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条件は改定されることがあります。契約前は各社の重要事項説明書と約款で確認してください。この記事は判断材料を並べているだけで、どれかを勧めるものではありません。

商品タイプごとの、向いている人

フルカバー型(ふぁみりぃ、うちの子、フリーペットほけん)

通院・入院・手術をまとめて補償するタイプ。合いそうなのは、皮膚や耳の慢性トラブルで通院が積み上がる犬です。アニコムの2023年度請求データでも、犬の診療費に占める割合は皮膚疾患が16.7%でトップ、耳の疾患が6.1%。1回は安いけれど回数がかさむ領域です。

申し込む前に確認しておきたいのは年間の限度日数。 アニコムは通院・入院あわせて考えると年20日、第一アイペットは年22日、FPCは通院年30日。週1回の通院を1年続けると52日になります。通院が多くなりそうな犬なら、日数の枠を先に見て、自己負担の見通しを立てておくと安心です。

手術特化型(ぷち、うちの子ライト、PS保険の100%プラン)

「日常の細かい出費は自分で払う。大きな出費に備えたい」という人に向いています。ぷちとうちの子ライトは手術1回50万円まで補償されるので、上の疾患別表の金額は余裕で収まります。

申し込む前に確認しておきたい点が3つ。 ①通院は補償対象外なので、慢性疾患の通院費は自己負担になります。②うちの子ライトには最低支払対象治療費3万円という設定があり、3万円以上の治療費が対象になる設計です。③PS保険の100%プランは補償割合が100%で、手術は年間最大20万円という枠があります。割合と年間枠は別の項目として見るとわかりやすいです。

FPCのフリーペットほけん

通院が年30日と他社より多く、入院は「1入院あたり125,000円・年3入院まで」という日数無制限の設計です。長期入院に備えたい人に向いた形です。

確認しておきたいのは手術が年1回まで、という点。 膝蓋骨脱臼のように両側を別日に手術する可能性がある犬なら、手術回数の枠が複数ある商品のほうが合います。逆に、入院が長引くケースに備えたい人にはこの設計が向いています。

保険を比べるときに読むべき5項目

補償割合の数字だけでなく、次を見比べると選びやすくなります。

  1. 手術1回あたりの支払限度額(4万円から50万円まで、10倍以上の幅があります)
  2. 年間の限度日数・限度回数(実際に効いてくるのはここ)
  3. 免責金額・最低支払対象治療費(一定額以上の治療費が対象になる設定です)
  4. 待機期間(契約直後の一定期間の扱い。がんは長めに設定されることがあります)
  5. 更新条件(新規加入できる年齢の上限、特定傷病の免責といった扱い)

1〜3は各社の公式ページに書いてあります。4と5は重要事項説明書に記載されていることが多い項目です。

一次情報から見えた、他ではあまり書かれていない話

統計を突き合わせると、「相場」以前の構造が見えてきます。

1. 全国の小動物診療施設は13,046か所。その6割は獣医師1人

農林水産省が獣医療法第3条に基づく届出をまとめた統計があります。令和7年12月31日現在で、全国の飼育動物診療施設は17,200施設。うち産業動物が4,154、小動物・その他が13,046です。

農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」
農林水産省「飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」(maff.go.jp・2026-10-12時点の画面)

就業獣医師数別に見ると、小動物・その他の13,046施設のうち、

  • 獣医師1人:8,067施設(61.8%)
  • 獣医師2人:2,636施設
  • 獣医師10人以上:359施設(2.8%)

6割は獣医師がひとりなんです。ここが料金に幅が出る背景でもあります。麻酔管理と執刀を分担できる体制、24時間の入院看護、CTやMRI。これらを備えるかどうかで原価が変わります。同じ「膝蓋骨脱臼の手術」でも、体制によってかかるコストが違うので、料金にも幅が出るわけです。

エックス線装置の届出も出ています。小動物・その他の施設で10,406台、施設数に対して79.8%。画像診断の設備は施設ごとに違う、ということがここに表れています。

2. 「安い病院」を探す前に、「どこで受けられるか」を調べると近道

診療料金実態調査の「自院では未実施」の列を、もう一度見てください。

  • 椎間板ヘルニア(ベントラルスロット):74.4%が未実施
  • 動脈管開存症:76.6%が未実施
  • 環軸亜脱臼:76.3%が未実施
  • 気管虚脱:73.0%が未実施
  • 白内障:78.8%が未実施
  • 前十字靭帯断裂(関節内法):53.8%が未実施
  • 全耳道切除・鼓室胞切開:52.4%が未実施

一方で、

  • 子宮蓄膿症:未実施は1.6%
  • 腫瘤切除:1.3%
  • 腸切除・吻合:3.2%
  • 帝王切開:6.2%

きれいに二分されています。緊急の腹部手術はほぼどこでも受けられる。整形外科・神経外科・眼科・循環器は、多くの病院が専門施設への紹介という形で対応している。

これは費用の話にそのまま跳ね返ります。未実施率が高い手術は、二次診療施設や大学病院に紹介されます。そうなると、紹介元での検査費、二次診療での初診・画像診断(MRIは別料金)、そのうえで手術費。「相場」を調べた数字と実際の請求のあいだに、紹介というワンステップが挟まるわけです。

椎間板ヘルニアで20万〜40万円という話をよく聞くのは、この構造だと思います。手術料の中央値7万〜9万円はそのとおりで、紹介と画像診断の費用が上に乗る前提で考えておくと、見通しが合います。

3. 診療費は8歳あたりから角度が変わる

アニコム損保の家庭どうぶつ白書2025には、2023年4月1日〜2024年3月31日の保険金請求データから算出した、犬の年齢別・年間診療費(1頭あたり、通院・入院・手術を含む)が載っています。対象は801,127頭。

犬の年齢別 年間診療費(1頭あたり) 0 10万 20万 0歳 5歳 10歳 15歳 平均値 中央値 出典:アニコム損保「家庭どうぶつ白書2025」2023年度の保険金請求データ(対象801,127頭・通院/入院/手術を含む)

年齢帯でまとめると、こうなります。

年齢帯 年間診療費・平均 年間診療費・中央値
0〜4歳 52,613円 21,860円
5〜9歳 88,362円 39,358円
10歳以上 172,742円 99,346円

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平均と中央値の開きが大きいのが特徴です。0〜4歳では平均52,613円に対して中央値21,860円。多くの子はそんなにかからないけれど、一部が大きく引き上げているという分布。手術というのは、まさにその「一部」を作る出来事です。

そして10歳以上になると中央値が99,346円。半分の犬が年10万円近く払っているという水準になります。ちなみにアニコムの同じ白書によると、2023年度の犬の平均寿命は14.1歳。10歳以上の期間が数年ある前提で考える必要があります。

4. 高齢期にお金がかかる病名は、手術とは限らない

同じ白書に、請求割合トップ10の疾患ごとの年間診療費が載っています。10歳以上の犬の上位を抜き出します。

傷病名(10歳以上) 年間診療費・平均 中央値 請求割合
弁膜症 156,244円 101,981円 8.8%
胆泥症 104,598円 63,118円 2.8%
歯周病/歯肉炎 66,372円 48,358円 5.5%
元気喪失(原因未定) 40,156円 19,360円 4.4%
膿皮症/細菌性皮膚炎 42,035円 16,610円 3.5%
胃炎/胃腸炎/腸炎 33,425円 14,663円 8.6%
嘔吐/下痢/血便(原因未定) 30,376円 13,409円 13.1%
膀胱炎 33,331円 16,900円 2.8%

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トップの弁膜症は、中央値で年101,981円。これは基本的に手術ではなく、投薬と定期検査の積み上げです。 心臓の薬を毎日飲み、数か月ごとにレントゲンと超音波。1年でこの額になります。

歯周病も中央値48,358円。全身麻酔下の歯科処置が入るとこの水準です。

つまり、シニア期の費用は「手術1発」より「続いていく通院」で膨らむ。ここが、手術限度額だけを見ていると見落としやすいところです。年間の限度日数を先に確認すべき理由が、この表にあります。

参考までに若い犬の側も。0〜4歳で請求割合6.8%を占める「消化管内異物/誤飲」は、年間診療費が平均31,246円・中央値15,059円。手術になった子はもっと高いはずですが、内視鏡で取れた子や吐かせて済んだ子も含めた数字なので、この程度に収まっています。

5. 犬種によって、そもそも到達する年齢が違う

白書2025の犬種別平均寿命(2023年度)も、費用の計画に効いてきます。

犬種 平均寿命
トイ・プードル 15.3歳
ビション・フリーゼ 15.0歳
カニーンヘン・ダックスフンド 15.0歳
混血犬(10kg未満) 14.8歳
柴 14.7歳
フレンチ・ブルドッグ 11.1歳
ゴールデン・レトリーバー 10.7歳
シベリアンハスキー 10.8歳
ブルドッグ 9.2歳
バーニーズ・マウンテン・ドッグ 8.4歳

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トイ・プードルは15.3歳、バーニーズは8.4歳。「10歳以上で年10万円」というシニア期が何年続くかが、犬種でまったく違うということです。小型犬は長く薄く、大型犬は短く濃く(かつ体重が大きいぶん1回あたりが高く)。同じ試算表をそのまま当てはめず、犬種に合わせて置き換えて考えるのがおすすめです。

よくある質問

Q. 見積もりは、なんて言って頼めばいいですか

「麻酔と入院と術後の薬まで含めた、退院までの概算総額を紙でください」。この言い方が一番ズレません。

手術料だけ聞くと、この記事の表と同じ数字が返ってきます。それは請求書の一部です。あわせて、術中に想定外のことが起きた場合はどのくらい上振れするかも聞いておくと、心の準備ができます。

Q. 病院によって料金が違うのはなぜですか

制度上、違って当たり前です。日本獣医師会が説明しているとおり、獣医師団体が基準料金を決めることは独占禁止法で禁じられていて、各院が自分で料金を設定して競争する仕組みになっています。

そのうえで、原価も本当に違います。農林水産省の統計では小動物診療施設の61.8%が獣医師1人。一方で獣医師10人以上の施設も359か所あります。夜間の入院管理ができる体制、専用の麻酔モニター、画像診断機器。これらの有無が価格に出ます。

金額を比べるのとあわせて、その病院がその手術を年に何件やっているかを聞くと、判断材料が増えて選びやすくなります。

Q. 補償割合は50%と70%、どちらを選べばいいですか

この記事では「どちらがいい」とは書きません。判断に使える数字だけ置いておきます。

上の試算表で、50%と70%の自己負担差は1回の手術あたり1万〜2.5万円程度でした。一方、保険料の差は月額で数百円〜千数百円というレンジになる商品が多い(各社の公式試算ページで確認できます)。年間に直すと、保険料差のほうが大きくなるケースもあります。

手術1回だけで比べると70%が手厚く、通院がほぼない犬なら保険料差のほうが効く、という関係です。あとは、貯金でどこまで受け止められるか。最終的には各社の重要事項説明書を読んで決めてください。

Q. 保険に入っていない状態で高額な手術を提示されました

まず、その手術が今日でなければいけないのかを獣医師に確認してください。緊急性のある処置と、時期を選べる処置があります。

そのうえで、支払方法(分割やクレジットの可否)、セカンドオピニオンの可否、二次診療施設に紹介した場合の見込み額も聞いてよい項目です。持病や年齢によって選べる選択肢は変わるので、金額だけで決めず、担当の獣医師と相談してください。

なお、加入後に発症した病気が補償の対象になるのが一般的です。すでに診断がついた病気は補償の対象外になるため、保険は元気なうちに検討しておくのがおすすめです。

Q. この記事の金額は、いつの数字ですか

疾患別の手術料は、日本獣医師会が平成26年度(2014年度)に実施し、平成27年に公表した「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」の中央値です。回答者は小動物臨床獣医師1,365名。

年間診療費と疾患別のデータは、アニコム損保「家庭どうぶつ白書2025」に載っている2023年4月1日〜2024年3月31日の保険金請求データです。

保険の補償条件は、各社公式ページの2026-08-19時点の記載です。

繰り返しますが、手術料の数字は10年以上前のものです。今はこれより高いと見ておくのが妥当です。日本獣医師会は令和3年度・令和5年の調査結果も公開しているので、より新しい数字が必要な方は日本獣医師会の小動物診療料金ページからPDFを直接ご確認ください。


まとめ:数字を持って病院に行く

最後に、この記事で拾った要点だけ並べます。

  • 動物病院に公定価格は無い。業界で目安を決めることも独占禁止法で禁じられている。「相場」は存在しないという前提から始める
  • 一般的な軟部外科の手術料は中央値4万〜5万円台。麻酔・入院を足して6万〜12万円あたり
  • 整形外科・神経外科は手術料だけで7万〜9万円台。多くの病院は専門施設への紹介で対応しているので、紹介と画像診断の費用も見込んでおく
  • 保険を比べるなら、補償割合より先に手術1回の限度額と、年間の限度日数・回数
  • シニア期のお金は手術より通院で膨らむ。弁膜症は中央値で年10万円

この記事は費用の判断材料をまとめたものです。治療方針そのものは、犬の状態を見ている獣医師にしか判断できません。数字は、その相談を具体的にするための道具として使ってください。

調べたもと(出典 16件)
  1. 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査(平成27年度)公益社団法人日本獣医師会・確認日 2026-08-19
  2. 小動物診療料金公益社団法人日本獣医師会・確認日 2026-08-19
  3. 家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査結果のとりまとめにあたって公益社団法人日本獣医師会・確認日 2026-08-19
  4. 相談事例49 獣医師会の診療料金に関するアンケート調査[団体ガイドライン8-7]公正取引委員会・確認日 2026-08-19
  5. 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)農林水産省・確認日 2026-08-19
  6. 令和7年 都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況(統計表)農林水産省・確認日 2026-08-19
  7. 飼育動物診療施設の開設届出状況の概要農林水産省・確認日 2026-08-19
  8. アニコム 家庭どうぶつ白書2025 第2部第3章 どうぶつの診療費と診療内容アニコム損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  9. アニコム 家庭どうぶつ白書2025 第2部第4章 どうぶつの寿命アニコム損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  10. 家庭どうぶつ白書(バックナンバー一覧)アニコム損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  11. 補償内容|ペット保険「どうぶつ健保ふぁみりぃ」アニコム損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  12. 補償内容|ペット保険「どうぶつ健保ぷち」アニコム損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  13. ペット保険「うちの子」の補償内容第一アイペット損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  14. ペット保険「うちの子ライト」の補償内容第一アイペット損害保険株式会社・確認日 2026-08-19
  15. フリーペットほけん株式会社FPC・確認日 2026-08-19
  16. 100%補償プランについてペットメディカルサポート株式会社(PS保険)・確認日 2026-08-19

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