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犬の食物アレルギーと除去食|原材料表示で分かること・分からないこと

犬の食物アレルギーを確かめる除去食試験は獣医師主導で進むもの。飼い主が袋の原材料表示から読み取れる範囲はどこまでか、日本の表示ルールの条文と海外の研究データから整理しました。療法食・アレルゲン配慮食の違いも比較表で。

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犬の食物アレルギーと除去食|原材料表示で分かること・分からないこと

足先を舐める音で夜中に目が覚める。耳の中がまた赤い。病院で「フードを変えてみましょうか」と言われて、家に帰って袋の裏をひっくり返す。そこに書いてあるのは「肉類(チキン、ビーフ等)」。

……この「等」って何ですか。

結論から言います。袋の原材料表示から分かるのは「この子に合わないかもしれない候補を外す」ところまでです。 何がアレルゲンかを特定するのは表示ではなく、獣医師と一緒に進める除去食試験のほう。そして日本の表示ルールは、飼い主がアレルゲンを追いかけるためには作られていません。

以下、その線引きをはっきりさせます。

この記事の目次
  1. 袋の裏で分かるのは、どこまでなのか 🐾
  2. 除去食試験って、そもそも何をするんですか 🏥
  3. どのくらい続けるのか(目安は8週間以上)
  4. 試験を台無しにするのは、たいていフード以外
  5. 血液検査だけでは決められない
  6. 実際に多いアレルゲンは、意外と地味な顔ぶれ
  7. 袋のどこを見ればいいのか 📋
  8. 「多い順」なのは法律じゃない
  9. 「肉類」としか書いてなくても、違反ではありません
  10. 「チキン」と名乗れるのは、5%から
  11. 療法食・アレルゲン配慮食・一般食、何が違うのか
  12. どう比べたか
  13. 加水分解タイプ:たんぱく質を細かく切る
  14. 新奇タンパク:食べたことのない食材を使う
  15. おやつにも療法食があります
  16. アレルゲン配慮の総合栄養食:療法食ではないけれど
  17. 一次情報:他所があまり書かない話 📋
  18. その1:日本の「総合栄養食」は、AAFCOの何年版なのか
  19. その2:表示と中身が一致しない、という研究があります
  20. その3:商品ページに「効きます」と書けない理由
  21. 飼い主のリアルな疑問に、データで答えます
  22. 「コーンスターチが入ってるけど、いいの?」
  23. 「食べてくれない」という壁
  24. で、うちの子はどうすればいいですか
  25. よくある質問
  26. この記事のまとめ

袋の裏で分かるのは、どこまでなのか 🐾

最初に地図を出しておきます。原材料表示で「できること」と「できないこと」は、けっこうきれいに分かれます。

表示で「できる」こと 表示では「できない」こと ・牛肉や乳製品が「書いてある」か ・たんぱく源が1種類に絞られているか ・加水分解タンパクかどうか ・療法食か総合栄養食かの区別 ・候補を絞って獣医師に相談する ・うちの子のアレルゲンの特定 ・「肉類」の中身が何かを知る ・「等」に隠れた原材料を知る ・製造ラインの混入まで読む ・皮膚症状の原因が食事かの判定

左側は自分でできます。右側は、どれだけ袋を睨んでも無理です。

ここを混同したまま「アレルギー対応」と書かれたフードを何袋も試して、結局よく分からないまま終わる——というのが、いちばんもったいないパターンだと思います。お金も時間もかかるのに、答えが出ない。

だから順番としては、まず病院で「これは食事の問題なのか」を切り分けてもらい、そのうえで原材料表示を武器として使う。逆にしないほうがいいです。

除去食試験って、そもそも何をするんですか 🏥

食物アレルギーの診断には、今のところ血液検査だけで完結する近道がありません。これは獣医皮膚科の系統的レビューで繰り返し確認されている話です。

やることはシンプルです。「アレルゲンになりにくい食事だけを一定期間与えて、症状が引くかを見る」。それだけ。ただしこの「だけ」が、生活の中でいちばん難しい。

STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP 4 診察・食歴の確認 これまで何を食べたか ノミ・感染症の除外 除去食だけを給与 おやつ・薬も見直す 目安 8週間以上 症状の変化を評価 かゆみ・赤み・便 記録を持って再診 食物負荷試験 元の食材を1つずつ 2週間あけて追加 STEP 2〜4はすべて獣医師の指示で進めます。自己判断で短縮すると判定できなくなります 出典:Olivry ら(2015)、Merck Veterinary Manual

どのくらい続けるのか(目安は8週間以上)

ここは数字がはっきりしています。犬209頭分のデータをまとめたOlivry らのレビューでは、除去食を始めてから3週で約半数に明らかな改善がみられ、5週では85%以上、8週では95%以上で症状の消失が報告された、とまとめられています。同レビューの結論は「犬猫の90%以上で診断するなら、除去食試験は最低8週間続けるべき」。

これはあくまで研究に参加した犬たちの集計で、うちの子が同じ経過をたどるとは限りません。経過の判定は獣医師に委ねてください。

一方、Merck Veterinary Manual は「95%の患者を拾うには最低10週かかることもある」としています。8週か10週か、微妙に食い違う。ただ、どちらも「1〜2週間で判断するのは早すぎる」という点では一致しています。

8週間って、だいたい2か月です。小型犬なら1kgの袋が2〜3袋分。ここを「なんとなく2週間試してみた」で終わらせると、そもそも判定材料になりません。

試験を台無しにするのは、たいていフード以外

MSD版のマニュアルが挙げている「試験中に避けるもの」のリストが、地味にえぐいです。

  • ガム(rawhide)、投薬用のおやつ(pill pocket)
  • 人の食事のおすそ分け
  • フレーバー付きのビタミン・ミネラルサプリ
  • チュアブルタイプやフレーバー付きのフィラリア予防薬・ノミ駆除薬

最後のやつ。あれ、牛肉・豚肉・大豆由来のタンパクが入っていることがあるんですね。毎月あげているおいしいフィラリアの錠剤が、2か月かけた試験の結論を曖昧にする。マニュアルでは、無香料のもの・注射・外用に切り替える選択肢が挙げられています。切り替えるかどうかは、かかりつけの獣医師に相談してください。

これ、飼い主側が知らないと踏むタイプの落とし穴だと思います。

血液検査だけでは決められない

「アレルギー検査をしたら鶏肉と牛肉が出ました」という紙を持って相談される方は多いはずです。ただ、Mueller & Olivry(2017)が22本の文献を評価した結果はこうでした。

検査 犬での正確性 備考
血清 食物特異的IgE 58〜87% 陽性的中率15〜100%。再現性が低い
血清 食物特異的IgG 77% 陽性的中率35%
パッチテスト 81〜90% 陰性的中率は高め(88〜99%)
リンパ球増殖試験 94% 精度は高いが現状は研究用ツール

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同じ血清を分けて盲検で測ると結果がぶれる、という報告も含まれています。レビューの結論は「現時点で最良の診断法は、除去食とそれに続く負荷試験である」。

正直に言うと、この表を見たときに「陽性的中率15〜100%」という幅の広さが一番こたえました。15%という数字が混ざっている検査を、単独の根拠にはしづらいですよね。検査そのものが無意味という話ではなく、除去食に使う食材を選ぶための参考にはなっても、それ単体で「うちの子のアレルゲンはこれ」とは決まらない、という位置づけです。

実際に多いアレルゲンは、意外と地味な顔ぶれ

「小麦が悪い」「穀物が悪い」という話をよく見かけますが、データを見ると景色が違います。

犬297頭のCAFR(皮膚の食物有害反応)症例を集めたMueller ら(2016)の集計です。

食材 報告された犬の数 割合
牛肉 102頭 34%
乳製品 51頭 17%
鶏肉 45頭 15%
小麦 38頭 13%
大豆 18頭 6%
ラム 14頭 5%
トウモロコシ 13頭 4%
卵 11頭 4%
豚肉 7頭 2%
魚 5頭 2%
米 5頭 2%

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上位は牛肉・乳製品・鶏肉・小麦。3頭に1頭が牛肉です。そして著者らの結論は「負荷試験は牛肉と乳製品から始めるべき」。

面白いのは、トウモロコシが4%、米が2%しかないこと。「グレインフリーにしたのに良くならない」という相談をよく見かけますが、そもそも穀類が主役の集計結果ではないんですよね。

ただし注意が必要で、これは「その食材がアレルギーを起こしやすい」というより「よく使われている食材ほど、その分よく報告されている」という側面があります。Merck Veterinary Manual も「これらは最も頻繁に給与されている食材に対応している」と書いています。牛肉が悪者なのではなく、牛肉をたくさん食べてきた犬が多い、ということ。

袋のどこを見ればいいのか 📋

ここから実務です。日本で売られているドッグフードの袋には、2つのルールが重なっています。

ペットフード安全法 法律の義務・罰則あり 公正競争規約 景表法に基づく業界の自主ルール 1. 名称(犬用か猫用か) 2. 原材料名 3. 賞味期限 4. 事業者名と住所 5. 原産国名 6. 成分(5項目の%) 7. 目的(総合栄養食・療法食など) 8. 内容量 9. 給与方法 + 原材料は「多い順」が必須に 出典:農林水産省 表示チェックシート/ペットフード公正取引協議会 公正競争規約

まずペットフード安全法。政令で対象は犬と猫に限定されていて、名称・原材料名・賞味期限・事業者名・原産国名の5項目の日本語表示が義務です。農林水産省と環境省の共管で2009年から施行されています。

そこに公正競争規約が乗ります。景品表示法にもとづき、公正取引委員会と消費者庁の認定を受けて官報告示されたルール。成分・目的・内容量・給与方法の4項目が追加され、合計9項目になります。

ここで、よくある誤解をひとつ潰しておきます。「規約は業界団体の会員だけのルールでしょ」と思われがちなんですが、公正取引協議会の大野和彦氏がペット栄養学会誌に書いた総説にはこうあります。

ペットフード公正取引協議会は任意の団体ではあるが、この団体が制定している公正競争規約が、消費者庁・公正取引委員会にて認定され官報告示されているため、ペットフード公正取引協議会会員外のペットフード製品についても、この規約に準拠すべく指導することになっている。

つまり、非会員のメーカーにも「準拠するよう指導する」枠組みになっている。会員かどうかで全部が変わるわけではない、ということですね。ここは私も調べるまで誤解していました。

「多い順」なのは法律じゃない

これも誤解されがちなところ。

農林水産省の表示チェックシートには、こう書いてあります。

ペットフード安全法では、原材料名の記載順序は特に規定していませんが、消費者に対する適切な情報提供の観点から、多い順に記載することが望ましいでしょう。

「望ましい」。法律上は義務ではありません。

一方、公正競争規約施行規則の第3条(7)アは「添加物以外の原材料は、原材料に占める重量の割合の多い順に記載すること」と定めています。こちらは明確な義務。

「先頭に書いてあるものが一番多い」という読み方が成り立つのは、法律ではなく規約のおかげ。この二重構造、飼い主にはなかなか見えません。

「肉類」としか書いてなくても、違反ではありません

さて、冒頭の「肉類(チキン、ビーフ等)」です。

これ、ルール上ちゃんと認められた書き方です。施行規則の同じ条文の続きを読むと、こうあります。

なお、分類名(穀類、いも類、でん粉類、糖類、種実類、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類)による表示も可能とする。また、分類名の次に括弧を付して、当該原材料の個別名を記載できることとする。その場合、栄養成分の調整等により、一時的に変更される可能性のある原材料については、「他」又は「等」と表示することもできることとする。

3段階になっているのが分かるでしょうか。

① 肉類 分類名だけ。これでもルール上は成立します。中身は分かりません ② 肉類(チキン、ビーフ等) 個別名は「記載できる」=任意。「等」の中身は書かれていません ③ チキン、チキンミール、ビーフミール…… 個別名をすべて列挙。除去食を考えるなら、ここまで書かれたものを 読み取り度:低 読み取り度:中 読み取り度:高 出典:ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則 第3条(7)

個別名の記載は「できる」であって、「しなければならない」ではありません。 そして「等」は、栄養調整のために原材料が入れ替わる可能性を織り込むための表記です。

メーカーを責める話ではありません。同じ栄養設計を維持しながら原材料の調達状況に対応するには、ある程度の自由度が要る。合理的な仕組みです。

しかも、協議会自身がこの点に気づいています。表示の基礎知識ページには、分類名のみの表示について「近年は食物アレルギーのあるペットもいることや、ペットオーナー様の原材料に関する関心の高さなどもあり、このような表示はほとんどないようです」という記述があります。

ルールとしては認められているけれど、実態としては減っている。個別名まで書いていないフードが目についたら、それ自体が「今の潮流から外れている」という情報になる、という読み方もできます。

ちなみに、ペットラインの原材料解説ページによると、「肉類」は「新鮮な又は適切な方法により保存されてある哺乳動物・家禽類等の生肉、肉体部分、及びその加工物」を指します。「ミートミール」は哺乳類、「家禽ミール」は鳥類、と使い分けられることがある、とも。素材が限定される場合は「チキンミール」「ポークミール」のように個別名で書かれます。

「チキン」と名乗れるのは、5%から

これは知っておくと商品選びが変わります。

公正競争規約の第7条、そのまま引きます。

事業者は「ビーフ」、「チキン」、「まぐろ」等特定の原材料をペットフードの内容量の5パーセント以上使用している場合でなければ、当該ペットフードの名称、絵、写真、説明文等に当該原材料を使用している旨の表示をしてはならない。

裏を返すと、5%入っていれば商品名にも写真にも使えるということです。

「チキン入り」と名乗るための最低ライン 5% 残り95%が何であっても、規約上は「チキン」を名乗れます つまり、パッケージの鶏の写真は「主原料が鶏」という意味ではありません 主原料かどうかは、原材料名の先頭に何が来ているかで判断します 出典:ペットフードの表示に関する公正競争規約 第7条(特定事項の表示基準)

「チキン&ライス」という商品名を見て「鶏と米が主原料なんだな」と読んでしまいがちですが、規約が保証しているのは5%というラインだけ。実際に多いかどうかは、原材料名の並び順で確認するしかありません。

除去食を考えている人にとっては、逆向きにも効きます。商品名に出ていない食材が入っていないとは限らない。 5%未満なら名前に出さなくていいわけですから。

療法食・アレルゲン配慮食・一般食、何が違うのか

商品名だけ見ていると全部「アレルギー対応」に見えます。でも制度上の位置づけはまったく違います。

どう比べたか

比較の軸は、飼い主が袋と公式サイトだけで確認できるものに絞りました。①パッケージの目的表示、②獣医師の指導に関する記載の有無、③たんぱく源の設計、④原材料が個別名まで書かれているか、⑤買える場所。効果の優劣は比較していません。そこは診断と獣医師の判断の領域です。

加水分解タイプの療法食 新奇タンパクの療法食 アレルゲン配慮の総合栄養食 一般の総合栄養食
目的の表示 療法食・特別療法食 療法食・特別療法食 総合栄養食 総合栄養食
獣医師の指導 注意書きが規約上の必須 同左 記載なし 記載なし
たんぱく源 分解して小さくする 食べた経験が少ない食材 1〜2種類に限定 複数
個別名の記載 ほぼ全部 ほぼ全部 ほぼ全部 分類名のことも
買える場所 動物病院・専用通販 同左 ホームセンター・EC どこでも
例 ロイヤルカナン 低分子プロテイン/ヒルズ z/d ヒルズ d/d サーモン&ポテト メディコートアドバンス アレルゲンカット ー

← 表は横にスクロールできます →

※2026-09-14時点の各社公式ページの記載に基づく

加水分解タイプ:たんぱく質を細かく切る

免疫が「異物」として認識しにくいサイズまで分解したものです。MSD Veterinary Manual によると、部分加水分解は一般に5キロダルトン未満、広範囲な加水分解は3キロダルトン未満、中には1キロダルトン以下まで分解したものもあるとされています。

ロイヤルカナン 低分子プロテイン(犬用ドライ)の原材料名は、こう始まります。

米粉、加水分解大豆タンパク(消化率90%以上)、動物性油脂、米、加水分解レバー(鶏、七面鳥)、ビートパルプ、大豆油、フラクトオリゴ糖、魚油……

分類名でまとめず、最初から個別名です。同じページには「特定の疾病または健康状態にあるペットの食事療法に利用することを目的とし、栄養成分の量や比率を調整又は特別な方法で製造されているため、獣医師の診断・指導のもとご使用ください」という注意書きがはっきり入っています。

ロイヤルカナン公式の「低分子プロテイン(犬用 ドライ)」商品ページ
ロイヤルカナン公式の「低分子プロテイン(犬用 ドライ)」商品ページ(royalcanin.com・2026-10-12時点の画面)

ヒルズ〈犬用〉z/d 小粒 ドライはこうです。

コーンスターチ、加水分解チキン、ピーカンナッツ殻パウダー、セルロース、ココナッツ油、亜麻仁、ビートパルプ、大豆油、柑橘類、魚油、クランベリー……

同じ加水分解でも、片方は大豆タンパク、片方はチキン。ここが違うので「どちらでも同じ」とはなりません。

日本ヒルズ・コルゲート公式の z/d 小粒 ドライ 商品ページ
日本ヒルズ・コルゲート公式の z/d 小粒 ドライ 商品ページ(hills.co.jp・2026-10-12時点の画面)

ロイヤルカナン 低分子プロテインを楽天で探す

新奇タンパク:食べたことのない食材を使う

分解するのではなく、そもそも出会っていない食材を選ぶアプローチです。ヒルズ〈犬用〉d/d サーモン&ポテトは「少ない原材料品目、単一の新奇動物性たんぱく質を使用」と説明されています。

ポテト、ポテトスターチ、サーモン、ポテト蛋白、植物性油脂、ココナッツ油、セルロース、ポークエキス(加水分解)、魚油……

先ほどのアレルゲン上位リスト(牛肉・乳製品・鶏肉・小麦)が、丸ごと入っていません。

おやつにも療法食があります

除去食試験中の「おやつどうしよう問題」に対して、ヒルズ〈犬用〉低アレルゲン トリーツのような製品があります。原材料は「コーンスターチ、加水分解チキン、セルロース、植物性油脂、ミネラル類、ビタミン類、アミノ酸類、酸化防止剤」。こちらも「獣医師の指導のもとに給与してください」と明記されています。

しつけのごほうびを完全にゼロにするのが現実的でない家庭は多いはずで、この選択肢があること自体、知っておく価値があると思います。

アレルゲン配慮の総合栄養食:療法食ではないけれど

ペットラインのメディコートアドバンス アレルゲンカット 魚&お米 1歳からの原材料名。

穀類(米粉、米、米ぬか)、魚介類(フィッシュミール、サーモンミール、フィッシュエキス)、油脂類(動物性油脂、ライスファットカルシウム、フィッシュオイル:DHA・EPA源)、種実類(ゴマ粉末)、糖類(フラクトオリゴ糖)、グルタチオン酵母、シャンピニオンエキス、ビタミン類(……)、ミネラル類(……)、酸化防止剤(ローズマリー抽出物、ミックストコフェロール)

分類名+括弧で個別名を全部書いています。「等」がない。これは読む側にとってはありがたい設計です。

シリーズの公式ページでは、牛肉・乳製品・小麦・鶏卵・鶏肉・大豆などを使用していないと説明されています。同じページの開発ストーリーには、アレルギーかもと思ったらまず獣医師に、という趣旨の記述もあります。

ペットライン公式「メディコートアドバンス アレルゲンカット 魚&お米」のページ
ペットライン公式「メディコートアドバンス アレルゲンカット 魚&お米」のページ(petline.co.jp・2026-10-12時点の画面)

表示は「総合栄養食/成犬期用」。日常のごはんとして完結します。ただし、診断のための除去食試験に使えるかどうかは獣医師の判断です。

メディコートアドバンス アレルゲンカットを楽天で探す

一次情報:他所があまり書かない話 📋

ここからが、この記事でいちばん書きたかった部分です。

その1:日本の「総合栄養食」は、AAFCOの何年版なのか

「AAFCO基準を満たす」という表記、よく見ますよね。でもどの年版かまで意識している人は少ないはずです。

先ほどのペット栄養学会誌の総説に、日本の総合栄養食の栄養基準がたどった道のりが書かれています。

1974年 2001年1月 2016年 現在 ドッグフード規約を制定 犬は1974年NRC基準 猫は1978年NRC基準 規約の再改定で AAFCO 1997年版の 栄養基準へ変更 AAFCOが 新しい栄養基準を発表 協議会は2016年版へ 「移行期」(2020年時点) 出典:大野和彦「ペットフードにかかわる諸法令とペットフードの表示」ペット栄養学会誌 23(2), 2020

ヨーロッパのFEDIAF(欧州ペットフード工業会連合)も「基本的にはAAFCO基準に基づいた栄養基準を採用しているが、一部は、NRCの2006年版による考え方も採用され、独自の基準の運用をしている」と説明されています。

つまり、日欧とも土台はAAFCO。でも完全に同一ではない。「AAFCO基準」という言葉が実際に指しているものは、国とタイミングで微妙にずれます。

そしてもうひとつ。施行規則の第8条では、「AAFCO(又はNRC)認定、承認、合格等、証明機関でないのに当該機関が自ら行う検査に合格したかのように誤認されるおそれがある表示」が不当表示として挙げられています。AAFCOは栄養基準を公表する団体であって、個別商品を認定する機関ではありません。

「AAFCO認定ドッグフード」という表記を見かけたら、それは規約上アウトの書き方です。同じ条文で「完全栄養食」「総合完全栄養食」もNGとされています。

その2:表示と中身が一致しない、という研究があります

原材料表示を読む力をつけても、「袋に書いてあること=中に入っているもの」でなければ意味がない。それを実際に調べた研究が複数あります。

Ricci らの研究(2018, BMC Vet Res)は、除去食として使われる新奇タンパク食(NPD)と加水分解食(HPD)計40製品を、19の動物種を判定できるマイクロアレイキットで検査しました。

除去食用フード40製品のDNA検査結果 表示にない動物種を検出 23製品 表示と中身が一致 10製品 表示の動物種が不在 5製品 表示が曖昧で判定不能 2製品 検出された混入で多かったのは豚・鶏・七面鳥。14ブランド中13ブランドに1つ以上の不一致製品 出典:Ricci ら(2018)BMC Veterinary Research

タイプ別では、加水分解食が9製品中6製品(67%)、新奇タンパク食が31製品中24製品(77%)。乾燥タイプの新奇タンパク食がいちばん問題が大きいと結論づけられています。

別の研究(2018)は、犬猫用の限定抗原ウェットフード11製品をPCRで調べ、6製品(54.5%)から表示されていない動物性タンパクのDNAを検出しました。うち1製品は、表示された動物種とまったく無関係な動物性タンパク源だけで構成されていた、とも書かれています。

誤解のないように書きますが、これは日本の商品を調べた研究ではありません。 欧州で流通していた製品が対象です。日本で同じ割合になるという根拠はありません。

そのうえで、この研究が示しているのは「原材料表示だけを頼りに、自己流で除去食を組み立てるのは思ったより難しい」ということだと思います。8週間かけた試験の結果が出なかったときに、「うちの子はこの食材は平気だった」と結論づけていいのかが揺らぐ。獣医師と一緒に進める意味は、ここにもあります。

その3:商品ページに「効きます」と書けない理由

ペットフードは動物用医薬品ではないので、薬機法(医薬品医療機器等法)上、効能効果をうたえません。先ほどの総説には、違反と判断されうる表現の例が具体的に並んでいます。

  • 医薬品的な効能効果の表現(予防、改善、痛みを和らげる など)
  • 疾病名、病状、好ましくない意味の語句(弱りがちな、疲労、衰えた など)
  • 一部の原材料の薬効を表現(「原料の◯◯は肝臓病に効くといわれている」など)
  • 効能効果を間接的に連想させる第三者の解説等による表現(学識者や一般の使用者の声を使って、そのフードで症状が良くなったかのように薬効を暗示する表現が例に挙げられています)

最後の項目、興味深くないですか。飼い主の体験談も、メーカー側が使えば規制対象になりうる。

これを知っていると、商品ページの書きぶりの読み方が変わります。効能をうたう言葉が見当たらないのは、ルール上そう書けないから。書いていないこと自体を「効果がない証拠」とも「隠している」とも読まないほうがいい、ということです。

飼い主のリアルな疑問に、データで答えます

制度と研究の話が続いたので、生身の声も混ぜます。

「コーンスターチが入ってるけど、いいの?」

Yahoo!知恵袋に、こういう質問が上がっていました。

ヒルズのz/dを勧められて2、3年フードはそれを与え続けています…コーンスターチが入っていました。うちの犬はトウモロコシにもアレルギー反応出てるのに

めちゃくちゃ鋭い質問だと思います。実際、z/d の原材料名の先頭はコーンスターチ。トウモロコシに反応が出ている子に、トウモロコシ由来の原材料。矛盾しているように見える。

ここに、ちょうど手がかりになりそうな研究があります。

Olivry & Bexley(2018)は、トウモロコシに感作された犬40頭・猫40頭の血清を使って、コーンの実・コーンフラワー・コーンスターチそれぞれの抽出物に対するIgEを測定しました。結果、中〜高反応性の犬の67%、猫の69%がコーンフラワーのアレルゲンにIgEを持っていた一方で、コーンスターチから分離したタンパクに対しては、どの血清も測定可能なIgEを示さなかった。

理由はシンプルで、でんぷんを精製する過程でタンパク質がほとんど除かれるからです。アレルゲンになるのはタンパク質のほう。

著者らは「トウモロコシアレルギーが疑われる犬猫には、炭水化物源としてコーンスターチを含むペットフードのほうが望ましい」と結論づけています。

つまり、「コーンスターチ」と「コーン」は原材料表示上は似ていても、扱いが違う。表示を眺めているだけでは、まず気づけない区別です。個人的には、この記事を書くために調べた中でいちばん「へえ」と思ったところでした。

うちの子に当てはまるかどうかは別なので、気になる場合はこの研究の存在も含めて獣医師に相談してみてください。

「食べてくれない」という壁

同じ知恵袋には、こんな投稿も。

低脂肪 アレルギー対応のフードを病院にすすめられてはじめたところ 食べてくれません ふやかしたり 温めたり 缶詰をトッピングしても数回でバレてしまいます

「数回でバレる」。分かります。そして缶詰をトッピングした時点で、除去食試験としては条件が崩れてしまうわけです。ここは獣医師に「食べないので同じシリーズのウェットを混ぜていいか」と聞くのが早い。

別の質問では、獣医師から3つの選択肢を提示されて迷っている方がいました。

食物アレルギーの疑いがあり、獣医師さんから、【ロイヤルカナン アミノペプチドフォーミュラー】【ロイヤルカナン 低分子プロテイン】【ヒルズ d/d】を勧められました。ロイヤルカナンかヒルズ、どちらがいいのでしょうか?

ペット用品ECのペットゴーに掲載されている低分子プロテイン ライトの購入者レビューには、こんな声も。

飛びつきはしないもののお腹がすけば食べてくれるので良かったです。(2025年4月1日)

粒が大きくてどうかなぁと心配しましたが、食いつき良く 食の細いワンちゃんも今のところ良く食べてくれています(2022年8月5日)

同じ商品でも評価が分かれる。こればかりは、うちの子に出してみないと分からない領域です。

どの声にも共通しているのは、フードそのものの良し悪しより「続けられるかどうか」で悩んでいること。8週間続けるって、そういうことなんですよね。

で、うちの子はどうすればいいですか

場面別に整理します。

かゆみや皮膚トラブルが続いていて、まだ受診していない → 先に病院です。ノミ・ダニ、細菌や真菌の感染、アトピー性皮膚炎など、食事以外の原因が混ざっていることがあります。フードを先に変えると、その切り分けが難しくなります。

「フードを変えてみましょう」と言われた → 具体的に何を、どのくらいの期間、何を止めるのか(おやつ・ガム・薬のフレーバーを含めて)をその場で確認してください。8週間という目安を知っているだけで、質問が具体的になります。

療法食を出されたけど食べない → 自己判断でトッピングする前に病院へ連絡を。同シリーズのウェットへの変更や、別の製品への切り替えといった選択肢があります。

診断はついていないけど、予防的に良いものを選びたい → 原材料が個別名まで書かれている商品を選ぶと、あとで獣医師に相談するときの情報になります。「肉類(チキン、ビーフ等)」より「チキン、チキンミール」のほうが、話が早い。

すでにアレルゲンが分かっていて、日常食を選び直したい → 該当の食材が個別名で書かれていない商品は、候補から外しやすくなります。商品名に出ていない食材が5%未満で入っている可能性もあるので、原材料名を端まで読むのが確実です。

よくある質問

Q. グレインフリーにすれば食物アレルギーは避けられますか?

犬297頭の集計では、トウモロコシ4%・米2%に対し、牛肉34%・乳製品17%・鶏肉15%でした。上位は動物性たんぱく源です。小麦は13%なので無関係ではありませんが、「穀物を抜けば済む」という構図にはなっていません。

Q. アレルギー検査の結果だけでフードを決めていいですか?

系統的レビューでは、血清食物特異的IgE検査の正確性は犬で58〜87%、陽性的中率は15〜100%と幅がありました。同じ血清を分けて測ると結果がぶれるという報告もあります。除去食試験の食材を選ぶ参考にはなっても、単独の根拠にはしにくい、というのが現状です。判断は獣医師に委ねてください。

Q. 「アレルゲンカット」と書いてあれば療法食と同じですか?

別物です。規約では療法食を「栄養成分の量や比率が調節され、特定の疾病又は健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図したもの」と定義し、給与方法の表示に「獣医師の指導に基づいて給与するべきものである旨の注意書き」を求めています。「総合栄養食」と書かれている商品は、その枠の外です。

Q. 「無添加」「ナチュラル」はどこまで信じていいですか?

規約上は条件があります。「無添加」は何が無添加かを明確に併記し、全製造工程でその原材料が使われていないと確認できる場合のみ。「ナチュラル」は化学的合成物と着色料を使っていないものに限られ、ビタミン類・ミネラル類・アミノ酸類にのみ合成物を使う場合は、その旨を目立つ表示の4分の1以上のフォントサイズで併記する必要があります。ついでに、「一切不使用」の「一切」や「◯◯などは不使用」の「など」は、誤解を与える強調表示として不当表示の例に挙げられています。

Q. 除去食試験の途中で症状が良くなったら、そこでやめていいですか?

自己判断でやめると、本当に食事が原因だったのかが確定しません。症状が落ち着いたあとに元の食材を戻す「負荷試験」で反応が出るかを見るのが、診断としての一連の流れです。MSD Veterinary Manual では、個々の食材を戻す間隔は2週間以上あけるとされています。進め方は獣医師の指示に従ってください。

Q. 日本のフードでも、表示と中身が違うことがあるんですか?

紹介した研究はいずれも欧州の製品を対象にしたもので、日本の製品を調べたものではありません。日本で同じ割合になるという根拠はありません。ただ「表示だけを信じて自己流で組み立てるのは難しい」という示唆は、国を問わず受け取れる部分だと思います。

この記事のまとめ

  • 原材料表示でできるのは「候補を外す」ところまで。 アレルゲンの特定は、獣医師主導の除去食試験と負荷試験でおこないます
  • 期間の目安は8週間以上。 犬209頭を集計した研究では、5週で85%以上、8週で95%以上に症状の消失が報告されています。Merck Veterinary Manual は最低10週という見方も示しています
  • 「肉類(チキン、ビーフ等)」は違反ではありません。 規約は分類名での表示を認めており、個別名の記載は任意。ただし協議会自身が「近年そういう表示はほとんどない」と述べています
  • 「チキン」と名乗れるのは内容量の5%から。 パッケージの写真は主原料の証明ではありません
  • 表示と中身が一致しないことがある、という研究があります。 除去食用40製品のうち23製品で表示にない動物種のDNAが検出されました(欧州の製品が対象)

次にやること: うちの子のフードの袋を裏返して、原材料名が「分類名だけ」「分類名+個別名」「個別名を全部列挙」のどれかを確認してください。そのうえで、気になる症状があるなら、袋の写真を撮って病院へ。会話がぐっと具体的になります。

(掲載している商品情報・表示内容は2026-09-14時点で各社公式ページに掲載されていたものです。最新の情報は各公式サイトでご確認ください)

調べたもと(出典 28件)
  1. ペットフード安全法 表示チェックシート(平成28年6月)農林水産省・確認日 2026-09-14
  2. ペットフードの表示に関する公正競争規約(令和4年9月28日 公正取引委員会・消費者庁 告示第8号)ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-09-14
  3. ペットフードの表示に関する公正競争規約施行規則(令和4年9月7日 公正取引委員会・消費者庁承認)ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-09-14
  4. 08.原材料について|表示の基礎知識ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-09-14
  5. 公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限についてペットフード公正取引協議会・確認日 2026-09-14
  6. ペットフード安全法に基づく必要表示事項についてペットフード公正取引協議会・確認日 2026-09-14
  7. 大野和彦「ペットフードにかかわる諸法令とペットフードの表示」ペット栄養学会誌 23(2):80-87, 2020日本ペット栄養学会(J-STAGE)・確認日 2026-09-14
  8. ペットフード安全法基準規格等環境省・確認日 2026-09-14
  9. ペットフードの安全関係(ペットフード安全法 事業者のみなさま向けページ)農林水産省・確認日 2026-09-14
  10. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (1): duration of elimination dietsBMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  11. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (2): common food allergen sources in dogs and catsBMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  12. Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (4): can we diagnose adverse food reactions in dogs and cats with in vivo or in vitro tests?BMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  13. Undeclared animal species in dry and wet novel and hydrolyzed protein diets for dogs and cats detected by microarray analysisBMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  14. Cross-contamination in canine and feline dietetic limited-antigen wet dietsBMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  15. Cornstarch is less allergenic than corn flour in dogs and cats previously sensitized to cornBMC Veterinary Research / PubMed Central・確認日 2026-09-14
  16. Cutaneous Food Allergy in AnimalsMerck Veterinary Manual・確認日 2026-09-14
  17. Cutaneous Food Allergy in Animals(MSD版)MSD Veterinary Manual・確認日 2026-09-14
  18. 低分子プロテイン(犬用 ドライ)ロイヤルカナン ジャポン・確認日 2026-09-14
  19. ヒルズ プリスクリプション・ダイエット〈犬用〉z/d 小粒 ドライ日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-09-14
  20. ヒルズ プリスクリプション・ダイエット〈犬用〉d/d サーモン&ポテト ドライ日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-09-14
  21. ヒルズ プリスクリプション・ダイエット〈犬用〉低アレルゲン トリーツ日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-09-14
  22. メディコートアドバンス アレルゲンカット 魚&お米 1歳からペットライン・確認日 2026-09-14
  23. アレルゲンカット魚&お米 メディコートアドバンスペットライン・確認日 2026-09-14
  24. ドッグフードの原材料は?表示を理解するための、主な原材料一覧ペットライン・確認日 2026-09-14
  25. 知恵袋の質問「z/dを2、3年与えているがコーンスターチが入っていた。うちの犬はトウモロコシにもアレルギー反応が出るのに」Yahoo!知恵袋・確認日 2026-09-14
  26. 知恵袋の質問「獣医師からアミノペプチド・低分子プロテイン・d/dを勧められた。どれがいいのか」Yahoo!知恵袋・確認日 2026-09-14
  27. 知恵袋の質問「病院に勧められたアレルギー対応フードを食べてくれない」Yahoo!知恵袋・確認日 2026-09-14
  28. ロイヤルカナン 低分子プロテイン ライト ドライ 購入者レビューペットゴー・確認日 2026-09-14

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