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療法食ドッグフードと市販の違い|自己判断で選んでいい?公式資料で整理

療法食は袋の「目的」欄で総合栄養食とは別の区分です。区分・入手経路・栄養設計の3軸で市販フードと比較し、日本獣医師会が集めた誤使用37例やメーカーの販売経路変更まで、公的資料をもとに判断材料を整理しました。

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動物病院の受付に置かれた2種類のフードとスパニエル
この画像はAIで生成したイメージです。実在の場所・書類・製品を撮影したものではありません。

ネットで「療法食 ドッグフード」と検索すると、腎臓用も尿石用もアレルギー用も、ふつうに買えてしまいます。カートに入れるボタンが押せる。だから「これ、勝手に買っていいのかな」と迷う。

その迷いはまっとうです。結論から言うと、買えることと、飼い主の判断だけで選べることは別の話です。

そしてもう一つ。ネット上でよく見る「療法食は総合栄養食ではなく、その他の目的食に分類される」という説明は、今は正確ではありません。制度が変わっています。そこから話します。

この記事の目次
  1. 時間がない人向け・3行の結論
  2. この記事で使った「ものさし」
  3. まず結論の表:療法食と市販フードは3軸でどう違うか
  4. ①区分:「その他の目的食」という説明は、もう古い
  5. 今の区分は4つ
  6. 療法食の定義
  7. で、「その他の目的食」説はどこから来たのか
  8. 療法食だけに課されている3つの縛り
  9. ②入手経路:買えるのに、買うときに病院を聞かれる
  10. ロイヤルカナンは2024年10月に販路を絞った
  11. ヒルズはクリニックコードを求める
  12. では、なぜフリマや並行的な通販では買えてしまうのか
  13. ③栄養設計:足し算ではなく引き算がある
  14. 一次情報:獣医師会が集めた「誤使用が疑われる」37例
  15. 委員会は事例を集めていた
  16. 報告書に載っている4つの事例
  17. 使用期間には「目安」がある
  18. 報告書が出した3つの提言
  19. 提言のその後
  20. 「病気が治る」とは書けない、という法律の線
  21. 代表的な処方目的のカテゴリ
  22. 結局、どう動けばいいのか
  23. すでに獣医師から指示が出ている場合
  24. 「なんとなく合いそう」で検討している場合
  25. 費用が気になる場合
  26. よくある質問
  27. Q. 療法食は総合栄養食ではないのですか?
  28. Q. 動物病院に行かずにネットで買っても違法ですか?
  29. Q. 以前ペットショップで買えた療法食が見当たりません
  30. Q. 症状が落ち着いたら市販フードに戻していいですか?
  31. Q. 「療法食」と「食事療法食」「特別療法食」は違うものですか?
  32. Q. 一般食や「〇〇ケア」と書かれた市販フードは療法食ですか?
  33. 調べてみて思ったこと
  34. 楽天で探す

時間がない人向け・3行の結論

  • 療法食は袋の「目的」欄が総合栄養食ではない。 別の区分です。だから「これと水だけで健康を維持できる設計」という前提で作られていません
  • ネットで買えるが、メーカー側は獣医師の指導を前提にしている。 ロイヤルカナンは2024年10月から販売経路を絞り、ヒルズは購入時にクリニックコードを求めます
  • 迷ったら、まず動物病院。 日本獣医師会は、獣医師の指導なしに使われた結果とみられる健康被害の事例を実際に集めています

この記事で使った「ものさし」

療法食と市販フードの違いは、次の3軸で整理できます。

軸 何を見るか なぜこの軸か
①区分 袋の「目的」欄に何と書いてあるか 法律ではなく業界のルールで、書き方が決まっているから
②入手経路 どこで買えるか、買うときに何を求められるか 「買える=自由に選べる」ではないことが、ここに出るから
③栄養設計 何を増やし、何を減らしてあるか 長く与えたときに差が出るのが、ここだから

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情報源は、ペットフード公正取引協議会・農林水産省・日本獣医師会と、ロイヤルカナン/ヒルズの公式ページです。

まず結論の表:療法食と市販フードは3軸でどう違うか

総合栄養食(いわゆる市販フード) 療法食
袋の「目的」欄 「総合栄養食」 「療法食」
設計の前提 これと水だけで、指定の成長段階の健康を維持できる栄養バランス 特定の疾病・健康状態にある犬の栄養学的サポート
病名の表示 できない 療法食だけ、病名の記載が可能
必須の注意書き なし 獣医師の指導に基づいて給与すべき旨
協議会への届出 不要 商品名・対象の疾病または健康状態・根拠データの所在を届出
主な入手経路(2026-08-21時点) スーパー、ホームセンター、通販、どこでも 動物病院/メーカー公式・認定オンラインストア中心
買うときに求められるもの とくになし かかりつけ動物病院の登録、クリニックコードなど
想定される使用期間 該当する成長段階のあいだ継続 目的による。短期のものも長期のものもある
法律上の位置づけ ペットフード安全法の対象 同じくペットフード安全法の対象(特別扱いはない)

← 表は横にスクロールできます →

表の最後の行が、この問題のややこしさの正体です。法律は療法食を特別扱いしていません。だから買えてしまう。でも中身の設計思想はまったく違う。そのギャップを、業界ルールとメーカーの自主的な仕組みが埋めている、という構造です。

①区分:「その他の目的食」という説明は、もう古い

袋には、この4つのうち必ず1つだけが書かれる 総合栄養食 これと水だけで 栄養が足りる 間食 おやつ しつけのごほうび 療法食 獣医師の指導の もとで使う その他の目的食 一般食・副食 栄養補完食など 「療法食」という区分は、あとからできた 2013年の獣医師会報告の時点 「その他の目的食」の中の一種 令和4年9月28日の規約変更 独立した区分として明記

今の区分は4つ

ペットフード公正取引協議会は、犬猫のフードに「目的」の表示を義務づけています。区分は4つ。総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食です。そして規約では、この「いずれかを表示する」と定められています(ペットフード公正取引協議会)。

いずれか。つまり両方は書けません。療法食の袋に「総合栄養食」とは書かれない。ここが読者にとって一番実用的なポイントです。袋を裏返して「目的」の欄を見れば、どちらなのか1秒で分かります。

総合栄養食の定義はこうです。

毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの

(表示に関するQ&A|ペットフード公正取引協議会)

「これと水だけで足りる」。それが総合栄養食という言葉の意味です。療法食は、この定義には当てはまりません。

療法食の定義

一方、療法食はこう定義されています。

特定の疾病又は健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図したもの

(05.療法食について|ペットフード公正取引協議会)

定義の中に「獣医師の指導のもとで」が入っています。ルールの文面そのものに書き込まれているわけです。

で、「その他の目的食」説はどこから来たのか

日本獣医師会が平成25年(2013年)6月に出した報告書「療法食の適正使用に向けた課題と対応」を読むと、当時の状況がこう書かれています。

公正競争規約の中で、ペットフードは目的により、総合栄養食、間食、その他の目的食に分類される

病気の犬猫に与えることを目的としたペットフードは、その他の目的食に分類され、特別療法食(療法食、食事療法食)と表示される

(公益社団法人 日本獣医師会)

区分は当時3つでした。療法食はそのうち「その他の目的食」の中に入っていた。ネット記事でよく見る説明は、この時代の話なんです。

現在の規約は令和4年9月28日付の公正取引委員会告示第8号。ここで第3条に総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食の4つが並び、療法食は第4項として独立した項目になっています(規約本文PDF)。附則には「規約の変更について公正取引委員会及び消費者庁長官の認定の告示があった日から施行する」とあります。

古い在庫の表示が残っている可能性はありますが、制度上は「療法食=その他の目的食」ではなくなっています。

療法食だけに課されている3つの縛り

区分が独立したことで、療法食には他にはない義務がついています。

1. 獣医師の指導に基づいて給与すべき旨の注意書き

協議会は「公正競争規約では、獣医師の指導に基づいて給与するべきものである旨の注意書きをするよう定めています」と説明しています(05.療法食について)。袋のどこかに、必ず書いてあるはずです。買う前に探してみてください。

2. 病名を書けるのは療法食だけ

協議会の解説には「療法食のみ病名の記載が可能」とあります。同時に「あくまで治療の補助であって、フードによって病気を予防したり、治療できるかのような表示はできない」とも明記されています(03.ペットフードの目的について)。

つまり、袋に「腎臓」「尿石」と書いてあること自体が、この区分の商品である証拠でもあるわけです。逆に言えば、市販の総合栄養食の袋に病名が書かれていたら、それはルール上おかしい。

3. 協議会への届出

療法食と表示する事業者は、商品名・対象となる犬または猫の疾病または健康状態・表示の根拠となるデータの所在を、公正取引協議会に届け出ることになっています(05.療法食について)。

「なんとなく腎臓によさそう」で療法食を名乗ることはできない、という建て付けです。

②入手経路:買えるのに、買うときに病院を聞かれる

ネットで買えるが、動物病院とひも付けられる ロイヤルカナン 食事療法食 2024年10月以降の販路 動物病院/公式ストア/ 認定オンラインストア かかりつけ動物病院を登録 注文内容が病院に共有され 獣医師が把握できる ヒルズ 特別療法食 動物病院/公式ショップ 「獣医師の推奨を 必要とする療法食」 クリニックコードを入力 コードはかかりつけの 獣医師から入手する ※2026年8月21日時点で各社公式ページに記載されている内容。条件は変わることがあります

ロイヤルカナンは2024年10月に販路を絞った

ここ、知らない人が多いと思います。

ロイヤルカナン ジャポンの公式ニュースによると、2024年10月以降、食事療法食は動物病院、公式オンラインストア、認定オンラインストアでの販売のみに切り替わりました。ペットショップやホームセンターなどの実店舗では買えなくなっています(ロイヤルカナン ジャポン)。

さらに踏み込んでいるのが、購入時の仕組みです。公式・認定ストアで買うと、かかりつけ動物病院に情報が共有され、購入された商品を獣医師が把握できるようになっています。共有される情報には、姓名・ペット名・動物種・品種・住所・カルテ番号などが含まれると説明されています。

共立製薬が運営に関わる「かかりつけ動物病院登録サイト」の説明では、この仕組みを導入した理由が書かれています。食事療法食は健康状態や特定の疾病の犬猫のために栄養バランスが調整された製品であり、飼い主の自己判断での使用開始・中止が健康に影響しうるため、というものです(共立製薬)。

公式通販「ベッツホームデリバリー」のページにも、はっきり書かれています。

食事療法食をご使用になる際は、必ず動物病院にご相談のうえ、獣医師の指導にしたがってご使用ください

(ベッツホームデリバリー)

ヒルズはクリニックコードを求める

日本ヒルズ・コルゲートも同じ方向です。公式サイトのプリスクリプション・ダイエットのページには「獣医師の推奨を必要とする療法食」と明記され、犬用のページでは「プリスクリプション・ダイエットのドッグフードは獣医師の推奨が必要です」とあります(ヒルズペット)。

公式通販のマイヒルズショップでは「かかりつけの獣医師にご相談の上、マイヒルズショップをご利用ください」と案内され、購入にクリニックコードが必要です。コードの入手方法についてはこう説明されています。

クリニックコードを入手するには、かかりつけの獣医師にお問い合わせください

(マイヒルズショップ)

要するに、メーカー側が自主的に「獣医師を経由しないと買いにくい」導線を作っている。法律で禁止されているわけではないのに、です。

では、なぜフリマや並行的な通販では買えてしまうのか

分かりにくい点ですが、理由は制度の側にあります。

ペットフードを規制する法律は「ペットフード安全法」です。この法律が義務づけているのは、名称・賞味期限・原材料名・原産国名・事業者の氏名または名称及び住所の5項目の日本語表示(ペットフード公正取引協議会)。安全に関わる部分が中心で、栄養の設計や販売相手の限定は入っていません。

日本獣医師会の報告書は、この点をずばり書いています。

我が国の法令上、療法食は一般のペットフードと同様に扱われており、獣医師の指導を受けずに飼育者がこれを入手することについて規制されていない

つまり「買えてしまう」のは制度の想定内です。だからこそ、業界ルールとメーカーの自主的な仕組みが後から積み上げられてきた、という順番になります。

③栄養設計:足し算ではなく引き算がある

市販の総合栄養食は「健康な犬に必要なものを、過不足なく入れる」設計です。療法食はそうではありません。日本獣医師会の報告書は、療法食をこう定義しています。

食事療法に利用することを意図し、栄養成分の量や比率が調整された特別な栄養特性や特別な製造方法等により、一般的な健康維持食とは異なる特別な製品特性を有するペットフード

キーワードは「調整」です。何かを増やすだけでなく、何かを意図的に減らしてある。たとえばミネラルを絞る、たんぱく質の量や質を変える、といった具合です。農林水産省の資料にも、表示例として「ミネラルの類調整により、△△病に対応した療法食です」という形が挙げられています(農林水産省)。

減らしてある設計を、それを必要としない犬に長く与えたらどうなるか。あるいは、状態が変わったのに同じものを与え続けたらどうなるか。そこが自己判断のリスクの本体です。

協議会も「長期間の不適切な使用は健康リスクがある」と書いています。獣医師会の報告書も「長期間に渡る不適切な食事管理が、治療の妨げや健康被害を助長するリスクとなりうる」としています。

具体的にどうなるのか。それが次の章です。

一次情報:獣医師会が集めた「誤使用が疑われる」37例

地方獣医師会を通じて集められた事例(2013年報告) 犬 19例 猫 18例 「報告が寄せられただけでも」という 書き方。全体像の統計ではない 報告書に内容が載っている4事例 尿石の再発防止用を1年10か月 → 腎不全の所見、BUNが80mg/dl 体重管理用を約1年 → 重度の削痩、低タンパク血症 結石溶解用を3年間そのまま → 別の種類の結石が見つかった 切り替え後に来院が途切れる → 結石が再発

「自己判断はやめましょう」と書いてある記事は山ほどあります。でも、なぜダメなのかは実例を見るのが早い。日本獣医師会の報告書に、それがあります。

委員会は事例を集めていた

日本獣医師会は平成23年度に「療法食の在り方検討委員会」を設置し、5回にわたって検討したうえで、平成25年6月に報告書を出しています。その中に、こうあります。

本委員会では、療法食の誤使用に起因することが疑われる家庭動物の健康被害等について、全国の地方獣医師会を通じた事例収集を行った。この結果、報告が寄せられただけでも犬19例、猫18例の事例が認められた

犬19例、猫18例。合わせて37例です。

数字の読み方には注意が必要です。これは全国の発生件数を推計した統計ではありません。「報告が寄せられただけでも」という書き方が示すとおり、拾えた分だけの数です。多いとも少ないとも言い切れない。ただ、具体的に何が起きたかが書かれているという点で、他では読めない資料です。

報告書に載っている4つの事例

犬猫 使っていた療法食 期間 起きたこと
犬(ヨークシャー・テリア、15歳) 尿石の再発防止用 1年10か月 腎不全の所見。BUNが80mg/dl。腎臓病用への切り替えなどで、1週間後62.6、2週間後54.2と改善傾向
犬(雑種) 体重管理用 約1年 重度の削痩と低タンパク血症(総タンパク4.5g/dl)
猫(雑種、6歳6か月) 溶解用から再発防止用に変更後、来院が途切れる ― ストルバイト結石が再発
猫(シャム、6歳) ストルバイト結石の溶解用 3年間 血尿で再来院。シュウ酸カルシウム結石と診断

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(日本獣医師会 療法食の適正使用に向けた課題と対応より整理)

パターンが見えてきませんか。間違ったものを選んだ、という事例は実は少ない。多いのは「合っていたものを、合わなくなったあとも使い続けた」ケースです。

猫の3年間の事例が象徴的です。溶解用のフードは、結石を溶かすためのもの。溶けたあとも同じ設計を続ければ、尿の性質は変わり続けます。そして今度は別の種類の結石ができた。

犬の1年10か月の事例も同じ構図です。尿石対策の設計が、年齢とともに変わる腎臓の状態と噛み合わなくなった、と読めます。

これは飼い主の不注意という話ではありません。フードは変わらないけれど、犬の体は変わる。その変化を見つけるのが定期的な受診であり、獣医師の指導という言葉の中身です。

使用期間には「目安」がある

報告書の参考資料には、欧州の制度で示されている推奨使用期間が載っています。これがなかなか具体的です。

目的 当初の推奨使用期間の例
急性の腸吸収障害 1〜2週間
一時的な腎機能低下 2〜4週間
ストルバイト結石の溶解 5〜12週間
不耐性を軽減する食事 3〜8週間
皮膚機能のサポート 2か月以内
関節の代謝サポート 3か月以内
慢性腎不全・心疾患・糖尿病など 当初6か月以内
膵外分泌機能不全 生涯

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(同報告書 参考資料2より。欧州の枠組みにおける記載で、日本の制度そのものではありません)

見てのとおり、期間はバラバラです。数週間で見直すものもあれば、生涯続けるものもある。「療法食は長く続けるもの」という一括りの思い込みは、少なくともこの表とは合いません。

そして、どれに当てはまるかを決めるには診断が要ります。ここは飼い主が判断できる領域ではありません。

報告書が出した3つの提言

委員会は最後に、日本獣医師会に対して次を提言しています。

  1. 療法食の適正使用に係る教育・広報活動 — 診療獣医師向けのガイダンス、動物看護師の技能習得機会の拡充、そして飼い主向けのガイダンス整備
  2. 療法食の位置づけの明確化と、栄養特性や表示に関する基準の整備
  3. 基準に適合した療法食の普及促進のための仕組みの構築(第三者的な組織の設置を含む)

注目したいのは1番目に「飼い主に対する療法食の適正使用ガイダンス」が入っていることです。獣医師だけの問題にしていない。飼い主が知っておくべきこととして位置づけられています。

提言のその後

3番目の提言は形になっています。獣医療法食評価センター(VDEC)です。

VDECの公式ページによると、2011年に日本獣医師会が「療法食の在り方検討委員会」を設置し、2013年の報告書で「療法食基準の必要性に加え、市販製品の客観的評価や適正使用を推進する体制の整備」が提言され、その実現を目指して設立された機関だと説明されています(獣医療法食評価センター)。防ぎたい健康被害として、腎不全・尿石・栄養失調が挙げられています。

2番目の提言も、令和4年の規約改正で療法食が独立区分になったことと、方向性が一致しています。10年かけて制度が動いた、という見方ができそうです。

「病気が治る」とは書けない、という法律の線

もう一つ、一次情報から。農林水産省の資料「ペットフード、サプリメントにおける医薬品的表示の考え方」です。

この資料では、動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的の物は医薬品と定義され、医薬品的表示がある製品は医薬品とみなされて医薬品医療機器等法上の規制対象になる、と整理されています。医薬品的な効能・効果として、病名(暗示を含む)、症状(暗示を含む)、疾病の予防を暗示する表示(免疫力、抵抗力、体力など)が挙げられています。

そのうえで療法食については「病名を表示する場合は、療法食であることを明記(治癒や予防の旨の表示は不可)」とされています。

つまり制度上、療法食は治すものとして売られていない。あくまで食事による管理をサポートするものです。「療法」という言葉の響きから、薬に近いものを想像しがちですよね。その理解は、制度上の位置づけとは少しずれています。

代表的な処方目的のカテゴリ

各社が公開しているラインナップを見ると、目的別のカテゴリはおおむね共通しています。どれが自分の犬に当てはまるかを、この記事で判断することはできません。あくまで「そういう種類がある」という地図として読んでください。

カテゴリ ロイヤルカナンの分類 ヒルズの分類
尿路・尿石 下部尿路疾患 尿ケア
腎臓 腎臓・心臓・関節疾患 腎臓ケア
皮膚・食物アレルギー 皮膚疾患 皮膚ケア(食物アレルギー、食物不耐性症)
消化器 消化器疾患 消化ケア
体重・糖尿病 肥満・糖尿病 体重管理
ライフステージ別 成長期/成犬期/中・高齢期 ―
その他 ― 糖尿病、肝臓、心臓、回復期ケア、歯と歯ぐき、関節

← 表は横にスクロールできます →

(ベッツホームデリバリーおよびヒルズ 犬用特別療法食一覧より、2026-08-21時点)

同じ「尿ケア」でも、結石の種類によって設計が違います。獣医師会の報告書の事例が示していたとおり、溶解用と再発防止用は別物です。カテゴリ名だけで選ぶのは、かなり無理があります。

結局、どう動けばいいのか

判断材料を並べてきたので、使い方をまとめます。

すでに獣医師から指示が出ている場合

買う場所を変えるだけなら、指示された銘柄・種類をそのまま。ロイヤルカナンなら公式・認定オンラインストアでかかりつけ病院を登録、ヒルズならクリニックコードを獣医師に聞く。どちらも公式ページに手順が載っています。

同じメーカーの似た名前の製品に、自己判断で乗り換えないことです。溶解用と再発防止用のような、名前が近くて中身が違う組み合わせが実際にあります。

「なんとなく合いそう」で検討している場合

ここが本題ですよね。判断材料になるのは、次の3つです。

  1. 設計は引き算を含む。必要ない犬にとっては、何かが足りない食事になりうる
  2. 期間の目安が目的ごとに違う。数週間のものから生涯のものまで。診断なしにこれは決められない
  3. 報告されている健康被害の多くは「使い続けたこと」由来。買った瞬間より、その後の見直しがない状態のほうが問題になっている

これらを踏まえると、動物病院で相談してから決めるほうが、判断材料が増えると言えそうです。この記事は診断をするものではありません。気になる症状があるなら、獣医師に相談してください。

費用が気になる場合

療法食は市販フードより高いことが多いです。そこで病院に行かずにネットで、と考える気持ちは分かります。

ただ、事例を読んだあとだと、見立てが少し変わります。1年10か月使い続けて腎不全の所見が出た犬は、その間の診察費は浮いていたかもしれない。でも結果として治療が必要になっています。どちらが結局高くつくかは、事前には分かりません。

かかりつけを持って定期的に見てもらうこと自体が、フード選びの精度を上げる投資になります。

よくある質問

Q. 療法食は総合栄養食ではないのですか?

袋の「目的」欄の表示としては、別の区分です。規約では総合栄養食・間食・療法食・その他の目的食の「いずれかを表示する」と定められているので、療法食の袋に「総合栄養食」とは書かれません。

ただし「栄養が足りない食事」という意味ではありません。療法食は特定の疾病・健康状態にある犬の栄養学的サポートを目的に設計されたもので、対象が違うということです。どの犬にどれが合うかは、獣医師に相談してください。

Q. 動物病院に行かずにネットで買っても違法ですか?

法律で禁じられているものではありません。日本獣医師会の報告書も「我が国の法令上、療法食は一般のペットフードと同様に扱われており、獣医師の指導を受けずに飼育者がこれを入手することについて規制されていない」と明記しています。

一方で、公正競争規約は療法食に「獣医師の指導に基づいて給与するべきものである旨の注意書き」を義務づけており、メーカー各社も購入時にかかりつけ動物病院の登録やクリニックコードを求めています。違法ではないが、制度もメーカーも獣医師の関与を前提に設計している、というのが実態です。

Q. 以前ペットショップで買えた療法食が見当たりません

ロイヤルカナンの食事療法食については、2024年10月以降、動物病院・公式オンラインストア・認定オンラインストアでの販売に限定され、ペットショップやホームセンターなどの実店舗では購入できなくなったと公式に案内されています。銘柄によって扱いが違うので、各メーカーの公式ページで確認するのが確実です。

Q. 症状が落ち着いたら市販フードに戻していいですか?

その判断は獣医師に相談してください。この記事で答えを出すことはできません。

判断材料として一つ挙げると、獣医師会の報告書に載っている事例は、切り替えのタイミングを自己判断したケースが目立ちます。来院が途切れたあとに結石が再発した猫、溶解用を3年続けて別の結石が見つかった猫。戻すのも続けるのも、状態を確認したうえでの判断が要る、ということだと読み取れました。

Q. 「療法食」と「食事療法食」「特別療法食」は違うものですか?

呼び方の違いが大きいようです。公正競争規約の区分名は「療法食」。ロイヤルカナンは「食事療法食」、ヒルズは「特別療法食」という商品名寄りの表現を使っています。獣医師会の報告書でも、病気の犬猫向けフードが「特別療法食(療法食、食事療法食)」と表示されると説明されていました。

気になる場合は、袋の「目的」欄の表示を見るのが確実です。

Q. 一般食や「〇〇ケア」と書かれた市販フードは療法食ですか?

「目的」欄を見てください。「その他の目的食」と書かれていれば、療法食ではありません。また、療法食以外は病名を記載できず、フードによって病気を予防したり治療できるかのような表示もできない、と協議会は説明しています。

パッケージの印象的なキャッチコピーではなく、区分の表示のほうを見る。これが一番早い見分け方です。

調べてみて思ったこと

このテーマで一番意外なのは「制度が10年かけて動いていた」ことです。

2013年に獣医師会が事例を集めて問題提起した。第三者機関が2014年にできた。2022年に規約が変わって療法食が独立区分になった。2024年にはロイヤルカナンが販路を絞った。ばらばらの出来事に見えて、全部つながっています。

一方で、ネット上の解説記事の多くは2013年時点の説明のまま止まっています。古い情報ほどコピーされて残る。このテーマに限った話ではないと思います。

だからこそ有効なのが、袋の「目的」欄を見る、という単純な確認方法です。制度の変遷を全部知らなくても、そこだけ見れば区分は分かります。

なお、この記事に書いた価格・販売条件・区分の扱いは2026-08-21時点で各公式ページに記載されていた内容です。制度もメーカーの方針も変わります。実際に買うときは、リンク先の公式ページで最新の内容を確認してください。

楽天で探す

この記事で触れた種類のものは、楽天市場でまとめて比べられます。価格と成分表示は各商品ページで確認してください。

調べたもと(出典 15件)
  1. 03.ペットフードの目的について|表示の基礎知識ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  2. 05.療法食について|表示の基礎知識ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  3. 公正競争規約に基づく必要表示事項及び表示制限についてペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  4. ペットフードの表示に関する公正競争規約(令和4年9月28日 公正取引委員会告示第8号)ペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  5. 表示に関するQ&Aペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  6. ペットフード安全法に基づく必要表示事項についてペットフード公正取引協議会・確認日 2026-08-21
  7. 療法食の適正使用に向けた課題と対応(療法食の在り方検討委員会報告、平成25年6月)公益社団法人 日本獣医師会・確認日 2026-08-21
  8. ペットフード、サプリメントにおける医薬品的表示の考え方農林水産省 消費・安全局畜水産安全管理課・確認日 2026-08-21
  9. 動物病院以外でロイヤルカナン食事療法食をご購入のお客様へロイヤルカナン ジャポン・確認日 2026-08-21
  10. ベッツホームデリバリー(ロイヤルカナン療法食公式通販)ロイヤルカナン ジャポン・確認日 2026-08-21
  11. かかりつけ動物病院を登録しよう共立製薬株式会社・確認日 2026-08-21
  12. ヒルズのプリスクリプション・ダイエット(特別療法食一覧)日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-08-21
  13. ヒルズのプリスクリプション・ダイエット(犬用 特別療法食一覧)日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-08-21
  14. マイヒルズショップ 犬用療法食ドッグフード日本ヒルズ・コルゲート・確認日 2026-08-21
  15. 獣医療法食評価センター(VDEC)について一般社団法人 獣医療法食評価センター・確認日 2026-08-21

価格や条件は変わることがあります。購入前に各公式ページで、体のことはかかりつけの獣医師にご確認ください。 調べ方と広告の扱いは運営者情報・編集方針に書いています。

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